たたかうまぶた

●霰粒腫
霰粒腫 (さんりゅうしゅ)とは、眼瞼(がんけん、目のまぶた)の病気の一種である。
●症状など
まぶたの裏側が腫れ、時には赤くなる。通常、痛みやかゆみはない。美容的に悪くなることがある。
マイボーム腺の出口がつまり、中に分泌物がたまったもので、麦粒腫(ものもらい)と異なり、通常細菌感染を伴わない。霰粒腫に感染を伴ったものを急性霰粒腫と呼ぶ。
(以上、ウィキペディアより抜粋)
気がついたら、右目の瞼の上にデキモノができていた。
そのうち治まるだろうと思い放ったらかしていたが、治まる気配がない。
しかも痛くも痒くもないのでなんだか気持ち悪いなぁと思って近所の眼科に行って診断してもらった。
いわゆる「ものもらい」(関西では「めばちこ」または「めいぼ」)は「麦粒腫」(ばくりゅうしゅ)と言うのだが
わたしの場合は「霰粒腫」 (さんりゅうしゅ)であった。
めばちこは「麦の粒」と書いてあるだけまだ可愛げがあるが、この霰粒腫はなんだろう。なんだか文字の感じだけでもいやーな感じなのである。
担当してくれた医師の話では、瞼の中にある「マイボーム腺」がなんらかの原因でつまり脂がたまってしまうとの事なのだが、うまくいけば自然に体内に吸収されて治癒する場合もあるが、そうでない場合は脂が固まってしまいずっとこのままになるという。そうならない為にも手術した方がいいのですけどどうしますか?と訊かれて私は気が動転してしまった。生まれてこのかた幸いなことに自分の身体に一度もメスを入れたり針で縫ったりしたことがないもので、いきなり手術と言われても、心の準備ができてないのだ。
「せ、先生!薬でどうにかならんもんですかね?」
と訊いてみたが、めばちこのように細菌の感染で起きるものではないから薬でどうこうできるものではない。なので手術で取り除くのが一番手っ取り早いのだそうで......それでも、とりあえずその日は目薬と軟膏を貰い、一週間ほど様子をみてから手術するかどうか決めましょう、との事で病院を後にした。
それから一週間、朝昼晩の目薬と夜寝る前の軟膏はかかさずやっていたが、こんなんで根本的に治るもんではないと確信。(それでも瞼の炎症を抑える効果があり、より手術がしやすくなる)手術に踏み切る事にした。
手術するのを決めたのはいいが、うっかりようつべさんで霰粒腫の手術の動画を見てしまい、手術に対する恐怖心が増幅してしまった。動画貼り付けようかと一瞬思ったけどめっちゃグロいので自粛しておきます。
さて、手術当日。
仕事を3時ぐらいで早退させてもらい、眼科に向かう。
眼科に入るとすぐ手術室のあるフロアに向かわされ、しばらくソファに座って待つ。
名前を呼ばれる。
看護士さんについていって通された部屋には手術まちの患者さんが二人ほど居た。
またそこでしばらく待つ。
そして重たそうな手術室のドアが開き、ついに私の番になった。
横になる。
まず最初に目の洗浄。
もうこのへんから恐怖でアタマがおかしくなりそうであんまりよく憶えていないのだが、
麻酔を打ってるので痛みは感じなかった。
瞼と目玉の間に、保護の為の板のようなものをはさんでオペをするのであるが
上から光を当てているので瞼を通して「ああ、うえでなんかやってるな」というのはうっすら分る。
うっすら分るだけに、逆に怖いのである。
痛くないのが幸いである。
切るのは痛くない。
だが、中に溜まっていた脂を押し出すのは、痛かった。
「せ、せんせ.....ちょ、いたいんすけど.....」
「ああ、いまね、指で押し出してるんですけどね、これ痛いっていうひと結構いますねー」
「あ、そ、そうなんすか.....」
そんなこんなでしばらくグリグリやられたあと、縫っておしまい。
正味15分ほどの手術だったが手汗脇汗びっちょりの超恐怖体験であった。
手術が終わって待合室で待っていたら嫁さんが迎えにきてくれた。
ものすごくホッとした。
手術当日は眼帯をして、翌日まで片目で過ごさなければならなかったのだが、片目だけだと遠近感がなくなるので、ものすごくものすごーく生活が不便になる。五体満足ということががどんだけミラクルなことなのか身を以て知ることとなった。
翌日には眼帯は取ってもよかったのだが、傷跡がまだ生々しいし仕事もあったのでつけたままにする。
でも仕事してる最中にあまりにも不便なので結局とってしまったが。
手術から一週間後に抜糸した。
抜糸などは「え、もう取れたん??」
というぐらいに痛みもなく、一瞬であった。
今となっては傷口も殆どわからないぐらいにキレイになっていて
眼科に通っていたことがもう遥か昔の出来事のように感じる。
手術で治ったとはいえ、霰粒腫は再発する可能性もある。
特に原因もないので、例えば煙草やめるとか酒やめるとか、運動するとか野菜食べてみるとか、生活するうえで「これをやれば再発なしよ!」というのが無いのである。実に困ったものである。
できれば切ったり縫ったりナシで、飲み薬で治るように、一刻も早い医学の進歩を願うばかりである。
